Home > review

Like a Daydream

ウラジーミル・ナボコフ 『透明な対象』

すっごい変な小説。ストーリーは冴えない男、ヒュー・パースンの生涯の記録、としかいいようがなく、たいしてドラマチックな展開をするでもなく唐突に終わっちゃう。でも、この小説はおもしろい。何が? そこかしこに仕込まれた小ネタが、どれもこれもニヤニヤするような楽しさと意地悪さに満ちてる。ぼくが気づかないようなハイレベルなネタも満載で、巻末の解説もためになる。鉛筆のうんちくで2ページも使うとか、なかなかお目にかかれない。ひたすら過剰な悪意のこもった人間描写もおかしすぎる。

笑いながら何回も読むのが非常に楽しい。

コーマック・マッカーシー 『血と暴力の国』

映画『ノー・カントリー』の原作。

もの凄いバイオレンス小説で、かなりびっくり。全編暴力に満ちてる。最初のシーンからして保安官補殺し、それもかなり残酷。以降、単なる殺人ってレベルじゃない派手な暴力事件が続き、人が死んでいく。心理描写は省かれ、淡々と何が起こったかを書き連ねていく文章は、逆に戦慄もの。暴力を正当化するロマンチックな言い訳は皆無。トラウマも狂気も復讐もない。いうなら理不尽ってことなんだろうけど、そう簡単にひと言ですませられないシビアなものがある。麻薬と犯罪組織っていう、ストーリーの枠組から想像できるものだけじゃない何か。

単純な対決ものではないので、結末にキャラへの感情移入を期待すると肩すかし。句点なしでずらずら続き、引用符(括弧)を省いた独特なスタイルは、ちょっと読みにくいかも。でも、この冷たく乾いた読書感はなかなかない。おすすめ。

OCEANLANE, Copeland

最近本も音楽もあんまり買わないなあ。というわけで、iTunes Storeでちょこちょこ。

OCEANLANE - On my way back home

日本のエモ系バンドの1stアルバム。何が好きかわかりやすいけど、曲は凄くいい。ただ、なんかすぐ飽きが来ちゃうような……なんでだろ。RADWIMPSとかELLEGARDENなんかとおんなじで、最初は「おおっ、いい!」と思うんだけど、2、3回聴いたら自然と聴かなくなっちゃうっていう。うーん……この問題には結構深いものがありそうな気がする。

Copeland - You are My Sunshine

これまたエモ系バンド。これは4thアルバム。すっかりギターサウンドは少なくなって、キーボードやストリングスが主体の地味な曲ばっかり。しかし、これがもう心に染みる美メロだらけ。こういう方面にバンドがシフトするとがっかりすることが多いんだけど、Copelandは例外。これは長く聴ける名盤だと思う。

Pele - Enemies

l.i.a.m.さんのustで知ったポストロックバンド。もちろんインスト。ちょっとルーズなタイム感のタカタカドラムと、ほぼクリーントーンの牧歌的ギターがすてき。ギターはテレキャスター・デラックスを改造してるっぽい。P90を載っけてるのかな。こういうサウンドでもメンバーにPC担当がいる辺りが今風。

Luminous Orange - Sakura Swirl

Luminous Orangeのこれ書いてる時点で最新アルバム。ぼくが買ったのはiTunes StoreでUS盤。

竹内さん、ストラトでした。ドラムとベース以外はほとんど宅録とか。結構打ち込みサウンドもたくさん使われてるんだけど、ノイジーなギターポップは変わらずで嬉しい限り。全体的にしっとりした曲が多め。しかし、アレンジ難しくて耳コピできない……。

SND, Farben

ひさしぶりのテクノ/エレクトロニカ。

SND - Atavism

webで試聴できるplay.comで貼ってるけど、iTunes StoreにPlusである。ストイックなマイクロミニマル。リズムが強くてかっこいい。これは曲なの? って真顔で聞かれると困るけど。どことなく叙情的なサウンドがいいのだ。

Farben - Texstar

これもiTunes Storeにあるけど、Plusじゃない。Beatportがおすすめ。Jan Jelinekが昔ユニットで出してたEPを集めたやつ。柔らかい音のミニマル。こっちはもうちょっと音楽的。複雑に絡みあったメランコリックな響きがすばらしい。どうやって作ってるのかなあ。

The Sea and Cake - Car Alarm

コメントで「Car Alarm」が「Jupiter Pop」をパクってる! とかいうから聞いてみたら、とってもよかったのでそのまま購入。ちなみにmaj7なコードは似てるけど、ぜんぜん違います。たとえるならSonic Youthっぽい。

アメリカはシカゴのバンド、もうかなりのベテランなんだね。オシャレ系インディーポップ。ものすごくセンスがいい。こういうの作りたいなあ。でも、できないんだよなあ……。

Ciao! Best Of Lush - Lush

ニコ動のコメントで「Lushみたいにミクとルカで」っていうのがあったんだけど、ぼくはLushは聞いたことなかった。というわけで、ベスト盤から入ってみた。スリーブの写真だと、なかなか迫力のあるお姉様がふたり、写っておられる。

一曲目でPixiesみたいだと思ったんだけど、レーベルが同じ4AD。納得。曲は新しい順に並んでる。ラストアルバムだけ芸風が違うらしく、それより前はドリームポップ系。ちょっとUKの民謡を思わせる、ファルセットぎみのコーラスがきれい。なるほどなあ。「For Love」とか「Untogether」あたりのサウンドがすてき。

Kings Of Convenience - Riot On An Empty Street

Kings Of Convenienceはノルウェーのアコースティック・デュオ。ラジオでかかってたシングルの「Misread」がとても良かった。基本アコースティックギターとボーカルなんだけど、ちょこちょこ他の楽器が入る。センチメンタルさがたまらない。ちょっとSimon and Garfunkelっぽい。

ピアノのリフが印象的な「Misread」がやっぱりいちばんいいかな。

スディール・ヴェンカテッシュ 『ヤバい社会学』

抜群におもしろくて、悲しい本。社会学者のヴェンカテッシュさんが、シカゴのギャングと文字 どおりつるんだ回想録。名著『ヤバい経済学』でネタになってた話が本になったもの。

のっけっからむちゃくちゃで、大学院で論文を書くネタにするため、地元のギャングが仕切る黒人のゲットーに、若きヴェンカテッシュさんが単身アンケート用紙を持って飛び込んでいくところから話がはじまる。変わったよそ者だってことで運良く仲良くなり、日常生活を一緒に過ごすようになる。ヤクの売人とギャング、貧困黒人コミュニティの日常が生き生き描かれる、っつーか全部実話。

貧乏コミュニティのどうしようもない現実には、読んでて涙が出てくる。親密な「家族」の連帯と助け合いにセットになっているのは、お約束の序列と身内びいきと賄賂と脅しに密告。『三丁目の夕日』なんかじゃ取り除かれてる、コミュニティの暗い面だ。コミュニティのリーダー——この場合、ギャングのボスや自治会長——は保護を与える一方で、メンバーから搾取する。時代劇によく出てくる、やくざの親分が仕切る宿場町ともイメージが被る。社会の普遍的な問題なんだな。

これはぜったい読むべき本。感想が好きでも嫌いでも構わない。

Archives

Home > review

Search
Feeds

Page Top