抜群におもしろくて、悲しい本。社会学者のヴェンカテッシュさんが、シカゴのギャングと文字 どおりつるんだ回想録。名著『ヤバい経済学』でネタになってた話が本になったもの。
のっけっからむちゃくちゃで、大学院で論文を書くネタにするため、地元のギャングが仕切る黒人のゲットーに、若きヴェンカテッシュさんが単身アンケート用紙を持って飛び込んでいくところから話がはじまる。変わったよそ者だってことで運良く仲良くなり、日常生活を一緒に過ごすようになる。ヤクの売人とギャング、貧困黒人コミュニティの日常が生き生き描かれる、っつーか全部実話。
貧乏コミュニティのどうしようもない現実には、読んでて涙が出てくる。親密な「家族」の連帯と助け合いにセットになっているのは、お約束の序列と身内びいきと賄賂と脅しに密告。『三丁目の夕日』なんかじゃ取り除かれてる、コミュニティの暗い面だ。コミュニティのリーダー——この場合、ギャングのボスや自治会長——は保護を与える一方で、メンバーから搾取する。時代劇によく出てくる、やくざの親分が仕切る宿場町ともイメージが被る。社会の普遍的な問題なんだな。
これはぜったい読むべき本。感想が好きでも嫌いでも構わない。