WINTERMUTE STRAY LIGHT
NOTE - あとがきのようなもの
はじめて初音ミクというものを知ったとき「やっぱり萌えになるのか。でもどうせ初代VOCALOIDみたいな微妙な感じなんじゃねーの。しかもWindows版しかないし」とか思ってました。ちょうど話題になって品薄になってた頃です。オリジナルも何曲か聞いてみたんですけど、いわゆるテクノポップ系キャラソングって感じのが多くて、あんまりおもしろくないなぁ、というのが正直なところでした。
その頃、ぼくははじめてインテルMacに買い換え、ゲーム機だったWindowsマシンを統合しようと画策してました。インテルCPUだとWindowsをインストールすることもできるのです。
何かがささやきました。「ミクあったらボーカルできるから、ロック作れるんじゃね? おまえ、PODもあるやろ?」。そう思うとミクの声もなんだか魅力的に聞こえてきたわけです。自分のミニマルテクノに限界を感じてて、長らくへこんでたせいもあったんでしょう。そんなやけくそぎみの勢いで、ミクはうちにやってきました。これが人間ならさぞかしいい迷惑でしょうが、ソフトは文句言いません。
ニコ動にうpした最初の曲「Mint Tea」には思ったより反応がありました。1,000再生を越えたときはやっぱり嬉しかったです、はい。驚いたのは、ぼくのシューゲイザー趣味やUKリスペクトをあっさり見抜く人がいたこと。そういう趣味の人がミク曲を聞いてるとは思いもしませんでした。ミクゲイザータグがはじめてつけられたときは、そのストレートな語感にひっくり返って笑った記憶があります。正直な話、この頃自分ではシューゲイザーを作ってる意識はあんまりありませんでした。でも、それがぼくのポジションを決定づけたわけです。
アルバムは10曲目までが本編、そこからmangoタイム、そしておまけです。ほぼすべての曲のミックスをやり直してますが、最後の初期2曲は歴史的価値が重要であろうということで、オリジナルのまま入れてます。タイトルはwintermuteの名前と同じ、ウィリアム・ギブスンの傑作SF小説『ニューロマンサー』から。「Warm Life」はこれだけどうしてもタイトルが気に入らなかったので、「Postscript」に改題しています。
収録されてる曲でいちばん好きなのは「Fury, Melancholy and Joy」。ぼくがロックでやりたいことが詰まってます。疾走するビート、コードストロークのギター、ノイズ、あっけない構成、逃避願望の歌詞。ここじゃない、どこかへ。
VOCALOIDを通じていろんな人と知り合えました。改めて感謝します。ずいぶん長いつきあいになるmango、bush。「スニーカー」のイラストを描いてくれたオオサカシュウジくん、ジャケットのデータを作ってくれたとど。KAITOをほんとに送りつけてきたニヤコ妹。CD企画に誘ってくれて今回の再録にも快く同意してくれたorangeさん、MuToPiAのGSKさん。ビデオを作ってくれたfuture extraのArkさん、はてなさん。いつもイラストを描いてくれたニヤコ。そして、曲を聞いてくれて、コメントや時には紹介までしてくれたたくさんの人。このCDを手にしてくれた人。みんなありがとう。
2009/03, wintermute.