昔々、wintermuteは、たいして詳しくもないくせに大学で映画なんか専攻してましたとさ。
その時、撮影かなんかの講義で教授(間違いなく一流の仕事をしてきた人)にいわれたことが、今でも印象に残ってる。
「個性を出そうと思ってあれこれやるな。自分がスタンダードだと思うことをやれ。それがきみらの個性だから」
個性なんざ勝手に出るから心配するなと。逆転の視点っていうか、その発想はなかったっていうか、非常に感銘を受けた。
まあ、いうのとやるんじゃ大違いで、何がスタンダードか迷うことがしょっちゅうではあるんだけど。でも、変な個性主義にポジティブにもネガティブにも惑わされない指針として、ぼくには非常に有益だったのだった。
話が飛躍するんだけど、芸術のオリジナル至上主義っていうのは歴史的に新しい。ここ100年くらい。もっと昔は古典をきっちり踏まえてることが重視されてたりした。インスパイヤじゃないとダメな時代もあったわけ。オリジナルであることが重要になったのには、人権運動の隆盛とか、著作権ビジネスの発達とか、いろいろ背景はあるみたい。その頂点のひとつが60年代のフラワームーブメントのロックで、ビートルズもジミヘンもフーも、その音楽以上にカリスマ性で語られた。個性を信仰する時代だった。
最近の新しいバンドは、そういう呪縛からは自由に見える。リスペクトするバンドからの影響を隠さないってのもそうだし。もうロックに新しいものなんかないんだ、って見方もあるんだろうけど、それは過剰な期待で敷居を高くしちゃってるだけじゃないかな。楽しい音楽はいっぱいある。ありすぎて困るくらい。