コーマック・マッカーシー 『血と暴力の国』

映画『ノー・カントリー』の原作。

もの凄いバイオレンス小説で、かなりびっくり。全編暴力に満ちてる。最初のシーンからして保安官補殺し、それもかなり残酷。以降、単なる殺人ってレベルじゃない派手な暴力事件が続き、人が死んでいく。心理描写は省かれ、淡々と何が起こったかを書き連ねていく文章は、逆に戦慄もの。暴力を正当化するロマンチックな言い訳は皆無。トラウマも狂気も復讐もない。いうなら理不尽ってことなんだろうけど、そう簡単にひと言ですませられないシビアなものがある。麻薬と犯罪組織っていう、ストーリーの枠組から想像できるものだけじゃない何か。

単純な対決ものではないので、結末にキャラへの感情移入を期待すると肩すかし。句点なしでずらずら続き、引用符(括弧)を省いた独特なスタイルは、ちょっと読みにくいかも。でも、この冷たく乾いた読書感はなかなかない。おすすめ。

“コーマック・マッカーシー 『血と暴力の国』” への2件の返信

  1. なんだか面白そうです!僕も読んでみたいです。
    最近はまたちょこちょことモナリザ・オーヴァドライヴを読み始めているのですが、これもなかなか面白いですねえ。

  2. >Arkさん
    マッカーシー、とにかく文章がすばらしいです、翻訳ではありますが。
    『モナリザ・オーヴァー・ドライヴ』は黒丸さん訳のギブスンではたしか最後ですよね。

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